前書き1
日光・奥州街道、そして会津街道を歩いたのは2016年のゴールデンウィークだった。それから8か月が経ち、今この前書きを書いている。 この8か月、色々なことがあった。旅の記憶もおぼろになりつつある。しかし、目を閉じれば、心に焼き付けた風景が現像液に浸した印画紙に 浮かぶ絵のように甦ってくる。
それまでの旅はすべて夏だった。飲んだ分だけ汗をかき、暑さのテントで寝返りを打ち、寝苦しさに顔をしかめる。そんな旅だった。
新緑の季節。行き交う風は心地よく、暑くなれば服を脱ぎ、寒くなれば上着をはおり、寝袋にくるまってはその暖かさに一人ごちる。
暑すぎず寒すぎず、一人歩く。そんな心身の自由は僕に何を与えたか。
東へ北へと向かった旅。
自由は安らかに悲しみの感を誘(いざな)う。
2017年1月17日 旅人記す
